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『鬼平犯科帳』の感想

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鬼平犯科帳は、歴史小説家の池波正太郎が書いた捕物帳です。池波正太郎の代表作にも数えられる有名な作品で、長谷川平蔵という江戸時代に実在した人物を主人公とする物語になっています。鬼平犯科帳は、テレビドラマ化や映画化、舞台化もされ人気シリーズになりました。今でもファンが多く、多くの人に愛されています。長谷川平蔵は火付盗賊改方という盗賊や放火犯などを取り締まる役所の長官で、同心や盗賊家業から足を洗ってお上に仕える、狗と呼ばれる密偵たちを使って盗賊を捕まえていきます。

鬼平犯科帳をお薦めしたいポイントは、長谷川平蔵の人物像にあります。長谷川平蔵は一流の剣の腕を持っており、斬り合いの時のカッコ良さには胸がわくわく躍ります。また、高い身分にありながら市井で体を売る女にも「同じ人間ではないか」というように懐が深く人情味にも溢れています。部下たちの信頼も厚く、この人のためにこそ働きたいと思わせる理想の上司NO1です。また、登場する人物のキャラクターもバリエーションに富んでいて、物語をより一層面白くさせてくれます。例えば、同心の木村忠吾は色気と食い気が盛んで失敗も多いもののどこか愛嬌のある人物で、同僚からは「兎忠(うさちゅう)」と呼ばれ平蔵からも可愛がられています。筆頭与力の佐嶋忠介は実直な人柄でいぶし銀的な存在です。小房の粂八やおまさ、相模の彦十といった密偵たちと長谷川平蔵との触れ合いも心にじんわりと染み入るような温かさを感じることができます。それから長谷川平蔵に捕えられる盗賊たちにも、魅力的な人物が数多く登場しています。本格派の盗賊が守るべきものとして「盗みの三ヶ条」、つまり「人を殺めぬこと、女を犯さぬこと、貧しいものからは盗らないこと」があるが、この掟を守る盗賊にはどこか芯の通った潔さが感じられます。そのため長谷川平蔵も本格派の盗賊たちには寛容に対応しています。

鬼平犯科帳が多くの人から愛される理由は、池波正太郎の独特の世界観にあります。単純な勧善懲悪の物語にはとどまらず、人の心の機微が丁寧に描かれています。長谷川平蔵はこの作品の中で、「人は悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら知らぬうちに悪事をはたらく。」と語っています。善か悪かはっきり区別することはできない、多くの矛盾を孕んだ生き物が人間だという考え方で、そのテーマがシリーズ全体を通して作品の下地になっているように感じられました。人によっては苦手な話もあるかと思いますが、読んで良かったと思える作品です。

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