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八甲田山、死の彷徨感想

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言わずと知れた新田次郎が執筆した山岳小説です。対ロシアとの戦争の為に寒冷地での予行演習という理由のもと二つの連隊は、八甲田山における過酷な雪中行軍を課せられます。極寒であり、冬の間は猟師も近寄らない八甲田山の従軍は苛烈を極めます。青森からは名誉の為に行軍を強行しようとする山田少佐、それに準ずる士官達、さらにはその過酷な雪中行軍に、十分な用意もできずに従っていく雪山に慣れていない兵卒達。山田少佐は案内人も断り210名もの大部隊で八甲田山縦走雪中行軍に進んでいきます。

一方、弘前からは少数精鋭による行軍を選択し、極寒対策をそろえ山に詳しい案内人を連れての八甲田山に挑みます。青森、弘前双方の士官は行軍前に会い、それぞれの地域から雪の八甲田山中間地点での再会そして行軍の成功を誓います。日露戦の為、少ない国土での戦闘演習に八甲田山が選ばれたのはやはり北国故でしょうか。国からの要望によって指示される軍隊、その成功か失敗かは隊員達にとって天と地ぐらいの違いはあったと思います。戦争におけるこの手の話にはいつも上層部における思惑が大変な影響を与えます。

大部隊を率いて青森を出発する隊、最小人数での弘前からの隊。二つの隊は八甲田山中間地点での再会はかないませんでした。名誉、その後の地位を気にする山田少佐率いる大部隊は雪の八甲田山踏破には用意、気持ちとも十分ではなかったからです。山田少佐は多くの兵卒を抱え雪の八甲田山にて行路を間違え遭難させることになります。気が付いた時には名誉や地位等もなく、あるのは寒さに死んでいった人、気が狂った人の山です。

私はこの話での見どころはこの部分ではないかと思います。地位や名誉への思いが無謀な行為へと多くの人を誘っていく。雪中行軍に対する予備知識不足と非合理な精神論。安易な考え方が多くの人の犠牲をつくったのです。当時の日本の考え方そのものがここにあると思います。雪の八甲田山で若き士官二人は生きて会えなかったのですが、読み進めると、死してなお誓いを果たそうとする思いの強さを感じさせます。非合理とわかってもやらなければならない軍隊という存在。その存在が私は恐ろしいと思いました。戦争の為の演習というだけでのトップダウン。この2年後日露戦争が起きます。雪中行軍を生き残った人達もこの戦争で全員亡くなります。

この本を読み進めると自分が実際に雪中行軍しているような感覚に襲われます。とても生々しい描写がされていて新田次郎はここにいたのではないかと錯覚するぐらいです。ぜひあなたも味わってみてください。

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

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