楽しく実りある人生を共に歩もう

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カラフル感想 日常のストレスに押しつぶされそうになっている人に、特にお薦めしたい1冊

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私がお薦めしたい1冊は、森絵都著「カラフル」です。
「カラフル」の主人公は、死によって現世から離れた魂です。魂が現世に戻って、生前に満たすことができなかった気持ちを満たしていくという物語です。

「カラフル」は、主人公の魂があの世に行く途中で、天使に出会うところから始まります。そして主人公は天使から、生前に大きな罪を犯したことを知らされます。

魂ですから、既に生前の記憶はありません。どんな罪を犯したのか、全くわかりません。天使も、何も教えてはくれません。 ただ、その罪を償うためのチャンスをくれます。

小林真という男子中学生の体に入って生活することが、修行になると言うのです。 こうして、死んだはずの主人公は、中学生として第二の人生を歩むことになるのです。

「カラフル」は基本的に、テンポ良く読むことのできる軽いテイストの小説です。分かりやすい文章で、展開もスピーディなので、一気にスムーズに読むことができます。

しかし書かれている内容は、むしろディープです。思春期独特の悩み、それを取り巻く大人たちの悩みがリアルに描かれているため、読みごたえがあり、考えさせられることも多いのです。

たとえば主人公は最初は、自分が入り込んでいた小林真を、家族愛に恵まれていない少年と感じます。

父親は、失業などのストレスを抱えています。母親は、日常そのものがストレスで、非日常を求めては失敗して、かえってストレスを増やしています。兄は、そのような両親がいることがストレスで、小林真に厳しく当たるのです。

その上、親しかった女の子がお金目当てでの交際をしていることに気付いたり、不良に財布やスニーカーを持って行かれたりと、トラブルが続きます。

ありがちな出来事、それほど珍しくない風景かもしれませんが、だからこそ主人公の辛さがリアルに伝わってきます。この点が、「カラフル」の見どころのひとつだと思います。

辛さから主人公は、天使に言われた修行に挫折しそうになります。しかしその後、父親やクラスメイトと話をしていくことで、それぞれの立場や葛藤を知ります。

そして、問題が多い中でも小林真が、家族にも周囲にも愛されていることに気付くのです。 このあたりが、「カラフル」の一番の見どころです。

自分の辛さばかりに目を向けて立ち止まっていた主人公が、周囲を理解して歩き始めるところは感動的です。

やがて主人公は、小林真の体を、小林真自身に返してあげたいと思うようになります。そして、自分が一体何者の魂だったのかを、思い出すのです。

設定はファンタジーですが、「カラフル」はヒューマンドラマと言える小説だと思います。

人それぞれに辛さがあり、それが原因でぶつかり合うこともありますが、それでも根底には愛情があることを教えてくれる小説です。

日常のストレスに押しつぶされそうになっている人には、特にお薦めしたい1冊です。読後には前向きになり、それまでとは違うカラフルな世界が見えるようになるかもしれません。

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