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歳月感想

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私が今日お薦めしたい歴史小説は、司馬遼太郎『歳月』です。『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』などで有名な人気作家の隠れた名作で、文庫本で2巻となっており、この作者にしては短めの作品となっていますが、西郷隆盛と大久保利通の対立の背景に隠されたミッシングリンクを探るような物語ですので、読むにはある程度の幕末から明治初期までの知識が必要です。

主役は明治維新から取り残された佐賀藩の江藤新平という人物です。前半は質実剛健で生真面目な佐賀藩にあってあまりにも型破りな彼が明治政府の中で成り上がる物語が描かれます。

後半は征韓論を巡る一大政治抗争の顛末を描く戦記

江戸幕府崩壊後の混乱の中を真っ直ぐに突き進む江藤の姿には圧倒されることと思います。後半は征韓論を巡る一大政治抗争の顛末を描く戦記です。大久保利通との主導権争いが今の日本を作ったと言っても過言ではありません。

さて、江藤新平という名前はあまり有名ではありませんが、社会の教科書には「佐賀の乱」の首謀者として、民法の教科書には今の法律の基礎となった草案を作った人物としてその名が刻まれています。今の日本を作った人物のひとりなのは間違いありません。

そんな江藤は明治初期の乱世を正そうと奔走し、同じく日本を正しく導こうとする大久保利通と対立してしまうわけですが、どちらも筋の通った人物で、明治時代にはすごい人がいたものだと驚かされます。

タイトルの『歳月』の意味は明確には語られていませんが、全編を通して感じられる無常観からは、人と人を対立させ、時代を作るものを指しているのだと思います。

西郷隆盛と大久保利通が志を同じくして打倒江戸幕府を果たしてからわずかに6年後、ふたりは征韓論を巡って対立し、その4年後には西南戦争で西郷隆盛は大久保利通に討たれてしまいます。

江藤新平が出仕してから佐賀の乱を起こすまでの7年間は、西郷隆盛と大久保利通が仲違いするまでの経緯と重なるところが多く、その意味でこの物語の裏の主役は西郷隆盛と大久保利通です。

「時代は10年ごとに動く」というのが西郷隆盛の歴史感だと作中で語られていますが、わずか10年で時代から取り残されてしまった西郷と、明治維新に乗り遅れた佐賀藩からわずか5年ほどで重役に就き、時代に追いつこうと必死だった江藤新平との対比は、まさに『歳月』のいたずらを思わせます。

幕末が好きな方は、後日談として読んでみると引き込まれると思います。ただ、ちょっとだけ物悲しい物語ですので、その点はあしからず。

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