アヒルと鴨のコインロッカーの感想 人生に途中参加

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有名ミステリー作家である伊坂幸太郎の小説です。第25回吉川英治文学新人賞を受賞した作品で、映画化もされるなどとても人気があります。現在と過去がどんどん描かれてゆくカットバック形式の物語です。

 この小説では、一人暮らしを始めた椎名という大学生が初対面の河崎という男性に、「一緒に本屋を襲わないか」と誘われます。そして、二人で広辞苑を奪い取るために本屋を襲撃することになります。

一方で過去のストーリーも並行して描かれてゆきます。ペットが殺害される事件を中心に、ブータンから来た留学生であるドルジという男性とドルジの恋人である琴美が過去の物語を進めてゆきます。

最後には過去と現在がシンクロし、驚きの結末を迎えます。

私は、この本を読む前にタイトルを見た時と読み終えてからで感想がとても変わりました。全てを読み終えてからタイトルを読み直すと、よくわからないタイトルも腑に落ちました。

特徴的な台詞や言葉選びのセンスはとても良く、そんな会話をする登場人物たちはみんな魅力的です。

不思議な雰囲気の変わったキャラクターを持つ登場人物ばかりでしたが、非現実的な感じは全くなく気持ちよく読むことができました。描かれている人物の個性豊かさやその人間関係はとても面白かったです。

特に、掴みどころがないけれど女性にモテモテな河崎という男性や、留学生のドルジはキーパーソンでした。私の身の回りに彼らのような人はいないのにもかかわらず、読んでいるうちに実際に存在する人物のように思えるほど生き生きと描写されていたので楽しく読むことができました。

最大の見どころは、ラストのいろいろな物語がリンクするところだと思います。

この小説を読んで私は、自分以外の誰かの人生に途中参加をするということについて考えました。アヒルと鴨のコインロッカーでは、いろいろな登場人物の物語を通じてそういうテーマが描かれていたと感じました。

途中参加というとすぐにイメージできないかもしれませんが、リアルな私達の世界でも誰かの人生の途中から登場することは多いと思います。

大学で新しく友達ができたなら、その友達の人生に途中参加をしているというわけです。この小説を読んで、そんな事実を改めて目の当たりにした気がします。

この小説はテンポよく物語が進んでいくので軽快に読み進めることができます。しかし、扱われているテーマは軽いものではありません。むしろ残酷なものもありました。

それでも最後の結末を迎えると心がスッキリする思いもあります。救いようのないことも世の中にはありますが、そこに救いを見出すことも大切だと思いました。この本は幅広い人たちが楽しむことができる小説です。ぜひともお薦めしたいです。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

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