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地獄を嗤う日光路感想 男の生き様を十分に感じさせる笹沢佐保の作品 

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日本文学、笹沢佐保の著書です。笹沢佐保と言えば、木枯し紋次郎が有名ですがこの作品もお薦めしたい独特の雰囲気を持つ主人公が登場します。

小仏の新三郎はこの時代で言うところの渡世人、無宿人です。腕は立つものの、二十歳の頃から発症した心臓病を患っています。医者からは長く生きられないと言われ、二日に一度か二度やってくる心臓発作に襲われながらも旅を続けています。

いつ果てるとも知れない体で旅を続けるのは心臓発作がおきたときに施しを受けた女にその時の借りを返すため、その女に会う事だけを生きがいとして旅を続けて行きます。名前、出身地、好きな花等の情報を頼りに探し続けます。

命が尽きるまでそのことが生きる事そのものと思いながら。新三郎は恩を受けた女の消息を追いかけながら旅をして行くのですが、その過程で色々な事件に巻き込まれていきます。

それもその女”お染”に係わってです。名前が同じだけ、お染という名前だけにどうしても反応してしまう。そのことを逆手に取られ騙されているのをわかっていても、いつ襲われるかわからない心臓発作を抱えながらお染に会う事だけに向かって戦っていきます。

生きがいが人をこれ程までに強くするのか。死ぬことも恐れていない男にとっての執念はかかわった事柄に凄まじく、そして辛辣に表れています。

この作品のなかの主人公の執念もさることながら恩を返すことが終わってしまった後の事、生きがいが無くなってしまった人間の姿というものも見どころの一つだと思います。

肝心な時に襲ってくる心臓発作にもドキドキします。私は木枯し紋次郎も好きですがこの作品の小仏の新三郎も大好きです。明日をも知れない体でありながらひとつの事だけに執着していくというところがです。

実際にはそんな事は現代にはないことかもしれませんが、男としてなんとなく憧れる生き方じゃないでしょうか。思った事を一筋に進む。その為にはどんな障害も乗り越えていく。誰にわかってもらえなくてもいい、自分が納得するのであればそれでいい。なんと男らしいんでしょう。

私にはそんなものはもちろん無いですがだからこそ憧れます。探し当てた女性が自分の探していた人とは違っていても最後まで決着を着ける主人公新三郎。

生きがいとは違った事でも次の生きがいのために進んでいく姿はなんとも清々しくも感じます。私はこの作品が大好きです。男の生き様を十分に感じさせる素晴らしいものだと思います。

地獄を嗤う日光路 (文春文庫)

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