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ミスター・ヴァーティゴ感想 人生の奥深さが味わえる

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私はアメリカの作家ポール・オースターの文学作品が好きなのですが、その中でも『ミスター・ヴァーティゴ』がお薦めしたい作品です。

この物語は主人公ウォルトの回想録であり、彼の人生の栄光と挫折、そして再生の物語です。主人公が9歳の少年の時、空を飛べるようにしてやるとイェフーディ師匠に誘われ、一緒に暮らしながら修行をするようになります。

物語の1、2章には、友人を失ったり自身が誘拐されたりという出来事を乗り越え、ウォルトが師匠と厳しい浮遊訓練を繰り返し、ついに「ウォルト・ザ・ワンダーボーイ」として成功し、名声を手に入れる姿が描かれています。

しかし3、4章には、師匠を失ってから青年ウォルトが成功から転落し再生する姿が描かれています。

この物語の見どころは、まず師匠の主人公への愛情の深さです。両親のいないウォルトに時に厳しく残酷に向き合いながらも、家族同然に暮らしお互いが最後までかけがえのない存在になっていくのが感動的です。

また前半で、ウォルトと師匠の家族であった黒人の少年と母親代わりのジプシーの女性が、白人至上主義団体に虐殺されてしまう場面はアメリカ社会の闇を描いているようです。

師匠の恋人的存在だったミセス・ウィザースプーンも主人公の人生に深く関わっている人物であり、想像を絶する浮遊訓練の描写にも、主人公を取り巻く人物がそれぞれ魅力的に描かれているのが救いです。

物語のテンポが軽快で読みやすく、真っ直ぐに心に響く文章なのも見どころだと思います。

物語の後半ではマフィア組織や軍隊を経て年老いていくウォルトの姿が語られているのですが、最後に彼が悟った「人は誰でも特別な力を内に秘めている」という言葉に静かな感動がありました。

著者のオースターらしく人生はハッピーエンドばかりではないけれども、ウォルトの様々な喜びや困難も、全て彼の人生に不可欠だったという印象を持ちました。

空を飛ぶということは普通は不可能だと想像するのですが、ウォルトが師匠から学んだ自分を霧散させて空を飛ぶという行為こそ、自分を抑えている目に見えないものから自分を解き放って人生を生きるということなのかと感じました。

また、人生は常に障害や難事と隣り合わせであるからこそ、人は一人では生きられないということも教えられた気がします。

決して一番幸せと言える終わりではないかもしれませんが、「ワンダーボーイ(驚異の少年)」となって栄光を手に入れ、「ミスター・ヴァーティゴ(めまい氏)」となって転落した人生を生きた主人公の最後の言葉に、人生に希望が持てる終わりだと思います。

私は大学生の時にこの小説に出会いましたが、大人になって読み返すと、歳月を重ねたからこそ主人公の人生の奥深さが味わえる小説だと思います。

ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)

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