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『時をかけるゆとり』の感想 とてつもなく面白いエッセイ

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『時をかけるゆとり』の感想 とてつもなく面白いエッセイ

直木賞作家、朝井リョウによるエッセイです。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』が原題です。文庫化に際してタイトルが変更になりました。

その名の通り、ゆとり世代の作者が大学時代に体験した、ちょっと(いや、かなり)馬鹿馬鹿しい出来事が語られます。ついでに、就職し、社会人になってからの話も少々。

章項目をいくつか挙げてみると、「便意に司られる」、「黒タイツおじさんと遭遇する」、「ピンク映画館で興奮する」……。目次を見ただけでもなかなかのカオス感なのではないでしょうか。

もちろん、「他学部の授業で絶望する」、「自身の就職活動について晒す」など、一見ふつうな章もあります。しかし蓋を開けてみれば、それらもやっぱり抱腹絶倒のエッセイなのです。

出来事を「面白い!」と捉えて語ることが、ものすごく上手い

エッセイの中には、自ら進んで面白いことをしようとした過程と結果を書いている所もあります。その一方で、否応なくその身に降りかかってきた出来事も。

どちらも面白いのですが、私が特に面白さを感じたのは、「巻き込まれ」タイプの体験の方です。

「朝井リョウはどうしてそんなに笑える状況に遭遇するんだ!」と思う一方で、実はそうではないのかも、とも思います。ただ、出来事を「面白い!」と捉えて語ることが、ものすごく上手いというだけなのではないかと。

例えば、カットモデルで失敗したり、スマートフォンの契約で失敗したりという体験は、言ってしまえばごくありふれたものです。さらに、バイト先が倒産するなどというのは、もはや一大事でしょう。

笑い事じゃない出来事が、なぜこんなにも面白くなるのか、彼の文才には驚きです。エッセイでここまで笑わされたのは初めて、というくらいです。

ちなみに、その面白さは読む人の状況によってかなり変わってくるかと思います。
私は社会人になってからこの本を手に取ったので、大学時代を振り返りつつ読んだようなところがあります。

特に就職活動に関する部分は自分の体験と直結し、可笑しみを感じやすかったと思います。 それを考えると、最もストレートに面白がれるのは、やはり渦中にいる大学生なのかもしれません。

特に、朝井リョウの出身大学である早稲田大学に通っている人は、「あるあるネタ」的な楽しみ方もできることでしょう。

しかし逆に、大学という場を経験していない人にもお薦めしたいと思います。おそらく、「大学生ってけっこう馬鹿なんだな」と思われるのではないでしょうか。とてつもなく面白いエッセイです。

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