サクラダリセット感想 嘘のような優しい世界と優しいキャラクター達

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ファンタジージャンルから、『サクラダリセット』という本をお薦めします。 この本は河野裕さんが2009年から刊行されたいわゆるライトノベルで全7巻、今年(2017年)の春にはアニメ化と実写映画化もされた根強いファンを持つ作品のひとつです。

舞台は桜良田という架空の街なのですが、その街の住人の大半は何らかの能力を持っています。例えば相手に声を届ける能力、猫と意識を共有できる能力、己の体に触れた物を消し去る能力など、その種類は様々です。

主人公の浅井ケイは記憶保持の能力を持っており、彼と行動を共にする春埼美空は世界を三日分リセットできる能力を持っています。その二人がお互いの能力を用いて、街で起こる事件を解決していきます。

POINT

この作品の見どころは、「能力」を扱う内容でありながら、物事を解決に導くのに己の能力に全く依存していないところにあります。 また作者の文章力、描写力が非常に高いことも見どころのひとつに挙げられます。

ライトノベル、と言うと、文章が一般書籍と比較するとやや幼稚、という印象を持ちますが、サクラダリセットはそうではありません。 文章を読めば主人公の見た景色や抱えている感情、場の空気がありありと伝わり、自分がまるでそこに立っているかのような錯覚を起こします。加えて言葉のもつ優しさや柔らかさ、あたたかさが際立っていて、それが話の流れに大変よく合っているところも見事です。

感想としましては、先ほども言ったように物事の解決を能力に頼らない、というところが最後まで一貫しており、読んでいてその優しい世界が非常に心地良かったです。

まるで意味のないような会話でも、後々の展開にしっかり生かされているところにも作者の力量を感じました。 桜良田にある能力の大半は些細なものであるが故に、話に起伏がない、地味であると捉える人もいるでしょう。

先ほども言ったようにサクラダリセットは「能力」ものでありながら、どこか私が今いる現実を感じさせる作品です。

私達が過ごしている日常というのは平淡で平凡で、起承転結なんてものはありません。そこにちょっとした「能力」を足して色を付けているのがこの作品です。 だからこそ身近で、だからこそあたたかみのあるこの作品に多く惹かれるのかもしれません。

能力で傷つく人もいない、死んでしまう人もいない、消えてしまう人もいない。そんな嘘のような優しい世界と優しいキャラクター達に、是非一度浸ってみて欲しいと思います。

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