笑わない数学者感想 二人の主人公の人物描写が魅力

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森博嗣という小説家がいます。長きに渡り安定して創作物を生み出し続けている有名な方です。

今回はその森博嗣さんがデビューしてから三作目として刊行された『笑わない数学者』という小説について書いていきます。

この作品は全十作から成るS&Mシリーズと呼ばれるミステリーものの三作目にあたります。

主人公は作品内ではN大学と語られる大学助教授の犀川創平、そしてその教え子となる女学生西之園萌絵。

この一風変わった組み合わせの二人の視点を中心に物語は語られていきます。舞台は人里離れた館『三ツ星館』。クリスマスイブに館でのパーティの招待を受けた犀川と萌絵は、他の参加者たちとともに三ツ星館に宿泊します。

そのパーティの最中、この館に住む天才数学者天王寺博士が参加者たちに謎かけをします。今私は庭に立っている銅像を消した、この謎が解けるか、と。

庭に行き、つい先ほどまであった巨大な銅像が跡形もなく消え去っていることを確認し驚愕する参加者たち。そして殺人が起き始める。犀川と萌絵は消え去った銅像と殺人という二つの謎に挑戦します。

このストーリーの大元となっているトリックは非常にシンプルです。わかってしまえばどうということはない仕掛けなのですが、初読では人間の心理の意表を突く痛烈な一撃を見舞われます。

そんなことだったら先に言ってくれよと思わなくもないですが、もちろんそれではミステリーとして成り立ちません。

ミステリーの読者には主に読み進めながら犯人捜しやトリック解明を試みる派とただ流れに沿って穏やかに読み進めていく派がいると思うのですが、この作品はどちらのタイプでも楽しめると思います。

「ほらやっぱりそうだったでしょ」でも「嘘、そんな仕掛けが!?」というタイプでも。

POINT

シンプルかつ大がかりなトリックとともにこの作品の魅力を作り出しているのは、犀川と萌絵という二人の主人公の人物描写です。

思いついたら行動しないではいられない直感的行動的なお嬢様萌絵と、相反して回りくどく自分さえわかっていればいいというような敬虔な読者すら苛々させかねない図太い精神の持ち主の犀川。

私が個人的にツボだったのが、この犀川という人物の面白さです。この人物の視点から繰り出される語り口ならいつまででも読み続けていたいと思わされます。この意見に関してはもしかすると少数派なのかもしれませんが、ちょっとひねくれているような人物が好きな人にとってはたまりません。

コアなミステリー好きでなくとも楽しめる作品だと思います。この作品はシリーズものの一作品なのですが、この作品だけ読んでも充分楽しめます。

二十年ほど前に出版されたものですが、最近になってこの作品のシリーズものがテレビドラマ化もされており、元々の森博嗣ファンにも新たな森博嗣ファンにもお薦めしたい作品です。

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