孟嘗君の感想

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私がお薦めしたい本は、宮城谷昌光先生の「孟嘗君」です。 宮城谷先生の書かれる小説は古代中国、中でも春秋戦国時代の英傑達を描いた物が多く、この作品の舞台も春秋戦国時代となります。 全5巻から構成される長編で、主人公はタイトルの通り孟嘗君(田文)なのですが、1、2巻では田文の育ての親である風洪、3巻では田文の師である孫臍を中心に物語が描かれています。 4、5巻になり、ようやく成長した田文が国々を渡り歩いて民のため政治を行っていく様が描かれています。

物語は斉の君主の子、田嬰の邸内から始まります。 五月五日に生まれた不吉な子というだけで殺せと命じられた赤子を、邸内の仕事をしていた僕延に匿ってもらうことになります。 この赤子こそ後の孟嘗君である田文です。 田文は、妹のために赤子を欲している風洪に拾われ、育てられることとなります。 女遊びを好み、フラフラと過ごしていた風洪は、商鞅らと出会って行く中で武を捨てて学問を志すことにし、名前も白圭としました。 白圭は、事件に巻き込まれ額に入れ墨を施され両足を切断された孫子を救い出し、孫子はその境遇から孫臍と呼ばれるようになり、斉の軍師として活躍することとなります。 白圭は田文を孫臍に託し、商人として歩むべく周へ移ります。 斉王に才を認められ、斉王の顧問という形になった孫臍は、軍師として佳陵の戦いや馬陵の戦いで活躍し天下にその名を知らしめることとなります。 風洪に育てられ、孫臍の元で学んだ田文は、天下の宰相になれという孫臍の遺言や白圭の教えに習い、斉を出て諸国を巡り宰相をつとめます。 特に風洪を中心に描いた1、2巻が素晴らしく、全てが見どころと言って良いほど。 単身屋敷に乗り込んで孫臍達を救い出す辺りは本当に痛快です。

全編見終わって感じるのは、とにかく風洪(白圭)の格好良さです。 仁と義を貫いた人で、かなりの境地に達していたであろう剣を簡単に捨て商人の道を進むことになるのですが、やることなすこと清々しく気持ちが良いのです。 印象的なセリフとして、「義を買い、仁を売ります。利は人に与えるものだと思っております。」という一文があります。 白圭が商人になる際、学問の師であるシコウとの会話の一節なのですが、この時代においてこういった考えが出来る白圭が父であったからこそ、田文が後に何千人もの食客を抱えるほどの人徳を持ちえたのだと思います。 田文、風洪、孫臍ら傑人のみならず、その周りの人物達もとても素晴らしく、偉大な人物が本人だけでなく、父や友ら周りの人々らによって形成されているというのがよくわかる作品です。

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