本書は2006年出版の新書ですが、もう10年以上にわたり増刷が続いているベストセラーの定番と言っていいでしょう。内容は、大卒新人の3割以上が最初に就職した会社を3年以内に辞める現実を、若者の視点から解説したものです。
従来は「最近の若者は忍耐力がないから」だの「ゆとり教育のせいで腰が据わっていないから」だの好き勝手に言われていましたが、企業内の年功序列制度が機能不全を起こしているのが真の原因だと喝破するものです。
たとえば、日本企業であれば、新人は初任給と呼ばれる一番安い賃金からスタートし、先輩にこき使われながら一年ごとに少しずつ昇給し、40歳以降に課長や部長という管理職ポストに就くことで、若いころの滅私奉公に対する報酬を取り返すことになります。
でも、現実はどうか。バブル世代は管理職手前で大量に滞留し、その過半数は生涯ヒラ社員のまま飼い殺しの憂き目を見ています。比較的恵まれているはずの団塊世代ですら、せいぜい課長止まりであり、部長以上に出世している人は少数派でした。
組織の成長がバブル崩壊後に鈍化した結果、約束されていたはずの将来の出世は多くの企業で幻想になってしまったわけですね。これを見た若手は「このまま先輩たちに滅私奉公しても、自分たちはもっともっと出世も昇給もできないポジションになってしまうだろう」と予想するわけです。
ではどうするか。3年で会社の敷いたレールから降りて、自分たちで自分自身の目的地を探す旅に出ます。3年で辞める若者は根性なしどころか、自分の足でしっかり立った人間だったわけです。根性なしなのは、会社のポストに懸命にしがみついて離れない上の世代の方だというのが本書の主張です。
また、本書は就職氷河期世代の惨状にも言及します。その理由は株主でも経営陣でもなく、労働組合が終身雇用を死守させているせいで、会社が新卒採用数を抑制した結果起きたことであると主張します。
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たとえば、会社には新人3人分の給料をもらいながら、たいして仕事をしていない中高年が大勢います。彼らを一人解雇すれば、未来ある若手が3人雇用できるのです。でも、終身雇用制度がある以上、会社は中高年の雇用を維持しつつ、新卒採用数を減らす以外にありません。
著者と同世代の自分にとって、本書の主張は目からうろこと言える内容でした。氷河期世代と言われる不遇の世代が生まれた理由を明快に示し、企業の人事制度のあるべき方向性を示した本書の意義はとても大きいように思います。特にこれから社会人となる若者にお薦めしたい本です。
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