嘘つきな彼女との再会

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嘘つきな彼女との再会

数年前に中学の同窓会がありました。その時に、あるクラスメイトの顔が浮かんできたのです。その人は、とても印象的な嘘を言いました。
Yさんとは、個人的にはそれほど親しくはありませんでした。ですが、同じ合唱部という事もあり、何かと話す機会があったんです。彼女は、しょっちゅう父親が会社を経営していると自慢していました。持っている文房具は、父親が海外出張で手に入れたものだとか、年に一回は船で遊びに行くとか、とにかく自慢話が多かったんです。
うちは、金銭的にも余裕がない家だったので、正直羨ましかったです。

ですが、だんだんYさんの話には辻褄が合わなくなり、疑問に感じる事が増えてきました。
たとえば、遊園地を貸しきったとか、お手伝いさんが2人もいるとか、なんだかまるでドラマのような世界でした。そして、Yさんは決して家に誰も呼びません。当時、お誕生日会を開くのが流行っていて、お金持ちの人はほとんど開いていました。でも、Yさんだけは決して開きませんでした。それどころか、仲のいい友達でさえ彼女の家に行った事がないと言うのです。

たまたま、私の父親はYさんの父親と同じ建設業だったので、何気なく聞いてみたんです。すると、父親が言うには確かにYさんの父親は会社を経営しているそうですが、従業員は2人しかいなくて、かなり経営は困難なようです。
そして、私が真相を知った頃には他のクラスメートもその事に気がついていたみたいです。クラスでは、Yさんの噂話で持ちきりでした。なんでも、Yさんのお母さんが新聞配達のアルバイトをしていたとかで、Yさんの話が作り話だとバレてしまったようです。

それまで、Yさんはクラスでも人気者でした。いつも会話の中心にいて、元気ハツラツだったんです。ところが、その噂話が出てから、Yさんは1人でいる事が多くなりました。合唱部もやめてしまい、表情も暗くなっていきました。
私も、声をかけるタイミングを失い、結局卒業式も何も言いませんでした。

それから、30年近くたった同窓会。Yさんは来るのかなと思いました。Yさんは、とっても明るい笑顔で会場に現れました。その時に、なぜ嘘をついたのか教えてくれました。
最初は裕福だった家庭が、徐々に崩壊してきて、せめて自分の中だけでも幸せな家庭が欲しかったそうです。自分がバカだったと笑うYさんがとても印象的でした。
嘘は悪い事だとはわかっていますが、時には自分を守るためにつく嘘もあるのだと知りました。
再会したYさんが笑顔だった事に、心からホッとしました。

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