結婚を機に実家を離れて早30年。
人並みに子育てを終え、会社勤めの夫は退職まであと数年、やっと自分の時間を持てるときが訪れていました。
そんな小春日和のある日、母から電話があり父が倒れたという報せが舞い込んできました。
幸いに一命は取り留めたけど予断を許さない状態だと。
他県に住んでいる妹にも連絡し、すぐに実家に飛んで帰りました。
「お父さんは最近、心不全があったからね….」と母から初めて聞き、そうだったんだ、と高齢になった両親をあまり気にしていなかったことを反省しました。
父はしばらくICU で治療を受けましたが、2週間後にこの世を旅立ちました。
80歳という長いようで短い人生を全うした父は、最後は目を覚ますことなく、家族の誰にもサヨナラをいうことはなかったのです。
・質素倹約の生活
もともと自立心の強い母は、父亡き後も気丈に振る舞い、遠くに住む娘たちに迷惑をかけまいと一人になった生活を淡々と過ごしていました。
そんなに趣味を持っている人でもなく、子供達が小さい時からパート勤めをし、自営業だった父の浮き沈みのある家計を助けていました。
父が亡くなる前はふたりでゆっくりと毎日を過ごし贅沢をするわけでもなく、年金だけで生活する質素倹約の生活でした。
私と妹は、一人住まいになった母を気遣いながらも自分たちの生活があるからと、母を引き取るとか実家に帰って一緒に暮らすとか、考えられませんでした。
でも通らずにはいられない親の高齢問題。
「お母さんがボケたらどうする?」「足腰が立たなくなったらどうする?」「老人ホームに入居できるお金はあるの?」そう、お金!これからもっとお金がかかるのです。
父が残した貯蓄はほんの微々たるもので、母の老後を賄うには到底無理でした。
でも私も妹もそんな余裕なんてないし…..
あまり触れたくない話題はスルーして母の健康だけを願い、3年が経ちました。
せめて実家にはなるだけ帰るようにして母の様子を伺っていました。
・〇〇ホームに入居
両親は仲の良い方だったので、やはり片方が先に行くと残された片方も落ち込みやすいとは本当みたいで、母の足腰の動きが急激に悪くなっていました。
幸いにボケはないし食事も摂れる、でも買い物も洗濯も料理を作るのもかなりしんどそうになっていました。
「お母さん、一人で生活するの無理なんじゃない?」と対策案もないまま母に問いました。
すると母から思いがけない返事が!「心配しなくていいよ、来月には〇〇ホームに入居することにしたから。」
「え!?そんなこといつの間に決めたの?お金はどうするの?老人ホームって月に15万円以上かかるでしょう?」
真っ先にお金の心配が脳裏をかすめた私に、さらに母の驚きの発言が!
「宝くじが当たったの、2千万円。」
母、宝くじ、2千万円が頭の中でぐるぐる周り、驚愕のあまり私は卒倒しそうでした。
ほんとに人生何が起こるかわかりません。
普段、宝くじに全く興味がない私は「興味がないから一生その恩恵を受けることはないんだな」と当たり前のことに気づきました。
私と妹は思わぬ出来事に感謝し、月に一度は母を訪問しています。
そして今では私も母に見習って、宝くじを買っています。(笑)