30歳を迎えた頃、転勤してきた男性に交際を申し込まれました。
私は、どちらかというと地味で、目立つ存在ではなかったので、男性からいきなり告白された経験はほとんどなく、それだけでドキドキしてしまいました。
彼は、眼鏡じゃなくてコンタクトにした方が良いとか、もっと明るい色の服を着るべきだと言って、いろいろとアドバイスをくれたので、私はすっかり彼の言いなりになってしまいました。
デートをすれば、まるでドラマや映画の中に出てくるような、ロマンティックな演出がされて、私は夢心地でした。
そして、ある日。
待ちに待ったプロポーズがされたのです。
私は、すぐにOKの返事をして、婚約は成立しました。
ですが、その日から、なんだか彼の様子がおかしくなってきたんです。
デートのときも、私がすべてのお金を出すようになりましたし、お金を貸すこともありました。
総額は、150万円ほどでした。
必ず返すからと言われて、渋々貸していたのですが、返済はほとんどされませんでした。
なぜか、私の実家のことを根掘り葉掘り聞いてくるのです。
私の実家は、小さいですが塗装業を営んでいたので、素直にそのことを伝えると、年収はいくらかとか、跡継ぎはどうするのかなど、更にしつこく聞いてきたのです。
本来なら、このときに気がつくべきでした。
ですが、このときの私は、彼のことを信頼しきっていて、すべてを良い方に捉えてしまったのです。
年収を聞いてくるのは、実家の心配をしてくれるからで、跡継ぎについて聞いてくるのも、私が一人っ子だから、それを気にしているのだとばかり思いました。
ですが、しばらくたってから、父親から妙なことを聞かれたのです。
事業の拡大を持ちかけられたというのです。
もちろん、父親にその意思はなく、彼に断るようにと言われました。
そして、やたらと婿養子について質問してきたらしく、私は彼に対して初めて不信感を抱くようになったのです。
そして、たまたま彼の部屋で掃除をしていたら、クローゼットの中からアルバムを発見したのです。
悪いこととは思ったのですが、彼の家族のことを知りたくて、捲ってみたんです。
そこには、彼の両親と兄弟らしき人の写真がありました。
そして、彼の結婚式の写真も見つけてしまったんです。
彼は、結婚していたんです。
私は、悔しくて悔しくて、彼の部屋をめちゃくちゃに荒らしました。
怒りと悲しみ、そして虚しさが同時に押し寄せてきました。
彼の顔など、2度と見たくはないと思い部屋を後にしたのです。
後日、私は真実を彼に求めました。
すると、彼は開き直ったように、結婚している事実をあっさり認めました。
そして、離婚するまで待ってくれと言われたのですが、私はもう彼のことを信じることは出来なかったので、別れることにしました。
貸したお金を返してくれるように頼んだところ、彼は返済を拒否しました。
そこで、弁護士を立てたところ、彼は奥さんにバレることを恐れて、慌てて返済をしてきました。
私としては、彼を結婚詐欺で訴えたいところでしたが、裁判などになれば職場でいづらくなるので諦めることにしました。
まさか自分が詐欺に遭うなんて、思ってもいませんでした。