私は、45歳の女性です。
幼い頃から貧乏だった私にとって、周囲の生活が羨ましくて仕方がありませんでした。
過去にファミコンが流行ったときにも、私は買ってはもらえず、友達を羨ましく思って見ていました。
その原因は、私の父にあります。給料はかなり高額なのですが、収入以上に借金が多かったのです。
家族には何も言わず、バイクを購入したり、生活費の殆どを趣味に注ぎ込んだりする人でした。
私と母がご飯と漬け物だけを食べている横で、平気で焼き肉を食べるような、そんな人でした。
ですが、離婚をして私を養う自信のなかった母にとっては、そんな父とは別れられず、ことあるごとに「ごめんね」と泣いていました。
だから、私も貧乏であることは触れずにきました。
洋服を買ってもらえなくても、おもちゃを買えなくても、不満は言いませんでした。
靴も、1度購入したら、平気で5年以上ははいていました。
もう、汚れてボロボロになったスニーカー。
それでもはかないよりはいいと、我慢してはき続けました。
私が、高校生になったばかりの頃。
その日は、前日に雨が降って、かなり道路には水溜まりができていました。
私と母は、父のツケを払いに行くために町へ行くことになりました。
バスに乗るのはもったいないということで、歩いて町へと向かったのですが、かなり足場が悪くて、私たちは水溜まりを避けながら歩いていました。
あともう少しで町につくというときに、雨が降り始めてきたんです。
私は母の手を握り、急いで近くにある大きな木の下へと入りました。
雨がだんだんひどくなり、私と母は止むのをただひたすら待ちました。
かなり寒くて、あまりにも雨が降っているからか、靴の中もグチャグチャでした。と、不意に母が、私の靴を指差して、「そんなところに、黒のラインなんてあったかしら」と言うんです。
ふと下を見ると、横の辺りに確かに黒いライン。
足を動かした瞬間、私は黒のラインの正体に気がつきました。
「もしかして、破けてるかも」
「ええっ」
母が驚いた声を上げます。
スニーカーの横がパックリ開いていたんです。
どうりで靴の中が濡れているわけです。
そして、母の靴を見て今度は私が声を上げました。
「お母さんの靴も破けてるっ」
「ええっ」
母の靴も、破けていたんです。
私と母は、お互いの顔を見て大笑いをしました。
まさか、2人とも破けてるなんて。
そして、笑いながら泣いていました。
私も、母もボロボロ泣いていました。
笑ってないと、もっと惨めな気持ちになりそうで、何もかもが嫌になりそうで、たまりませんでした。
2人で抱き合って泣き続け、貧乏は本当に嫌だと思いました。
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