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私が高校一年生の時のバレンタインの体験です。
私の高校には、当時24歳の数学教師の先生がいて、私が入学した時から先輩たちのチョコを抱え込む程人気の先生でした。
黒髪が耳にかかり、黒い上縁のメガネをかけたその顔は、どう見ても大学生の童顔で、無理に大人っぽくしているような雰囲気が抜けきらない人で、入学当初は何が女生徒たちに人気なのかわかりませんでした。
でも、一年の後期の授業からその先生が担当になると、徐々に授業中の真剣な眼差しと、休憩時間のときのどこか抜けた雰囲気とのギャップに、私も気がつけば取り込まれていきました。
もともと数学の嫌いだった私は、テストでも赤点ギリギリで、授業を聞いているのさえ苦痛でしたが、その先生が担当になってからは、積極的に質問をし、放課後つきっきりで補習をしてもらったりすることもありました。その甲斐あって、数学の成績も順調に伸び、先生との距離も近くなった気がしました。
気がつけば、バレンタインが間近に迫っていて、私は当たり前のように先生の分のチョコを作る準備に取り掛かっていました。
バレンタイン当日、わかってはいましたが、やはり職員室の入口には先生を待つ女子生徒が溢れていました。その人数を見ると、なんだか先生との距離が遠くなった気がして、チョコを渡すことすら気が引けてきてしまいました。
結局、先生が来る前に教室に戻ってしまい、渡せずにカバンの中に入れたまま、その日の授業が全て終了しました。あんなに大勢からもらっているんだから、私があげなくたって何も気にならない。自暴自棄になりながら教室を出ると、廊下には先生が壁に寄りかかり立っていました。
「先生、てっきりチョコもらえるもんだと期待してたんだけどなー、友チョコの余りとかないのー?」
笑いながら冗談交じりに言った先生は、あんなに一緒に勉強したのに、とわざとらしく口を尖らせてきました。まさか、先生から言われるなんて思ってもいなかった私は、
「これ、友チョコのあまりです」
と、チョコを押し付けるようにして走って帰りました。
そのチョコは、どう見ても気合の入った、箱入りのチョコ。友達には袋に詰めただけのチョコを配っていたので、先生がその違いに気づいたらどうしよう、と赤面するしかない帰り道でした。
一ヶ月後のホワイトデー。もらった分だけ律儀にお返しをする先生は、紙袋いっぱいにクッキーを持って、女子生徒にお返しをして回っていました。その光景を見て辛くなってしまった私は、踵を返し教室へ入ろうとしました。
「あ、待って、これお返しだよ」
後ろから呼び止められて、先生の手元を見ると、赤いリボンのついた、クッキーが入った袋が握られていました。受け取って、ぼんやりとしながらお礼を言うと、先生はニコッと笑ってまた生徒に配り始めました。
ほかの生徒に配っている袋には、リボンはついていません。私はただ、そのリボンのついたお返しのクッキーを、こっそりとカバンに入れて、静かに喜びを味わっていました。
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