私は学生時代にストーカーに遭った経験があり、女子大学卒業後に就職した大手スーパーの事務員で働いていた時も、男性を見ると襲われる恐怖感に駆られて、精神的に病むことが多くなり、以降、精神科に通院していました。
精神科では、精神分裂症の妄想型と診断されました。
25歳の時でした。その後も男性恐怖症は治らず、まともに対応できませんでした。
もうこのまま独りで歳を取った両親と一緒に実家暮らしをするものだと覚悟していました。
そんなある日のことで、お見合いの話が来ました。
地元の大企業に勤務する1つ年上の男性でした。
眉毛が太くてタレ目で優しそうな面長の表情が印象的でした。
どうせダメだろうと思いつつ、一度あって見ても良いかなと考えてお見合いして見ました。
するとどうでしょう、今まで会ったことがないくらい、息がぴったりと言いますか、凄い穏やかでずっと笑っている感じの様な男性で、私はどちらかと言えば、ネクラだったので、凄く一緒に居て落ち着きました。
そして、お見合いなのに変ですが、先ずはお友達からと言うことで、お付き合いが始まりました。
彼と出会ってから私の精神病は、不思議なくらい症状がなくなりました。
きっと頼れる男性が現れたことで、不安だった私の気持ちが一時的に無くなったのだと思います。
ただそれを私は、完全に治ったと勘違いしてしまいました。
それで、彼とお付き合いし始めてから、精神科には通わなくなりました。
薬も診断も不要になったのです。
完治したと勝手に判断しました。
そして、彼に黙ったまま1年後の27歳の時、結婚しました。
結婚してからは、今後は子供はいつなんだと言う周囲からのプレッシャーがありましたが、二人でマイペースで行こうと決めていたので、気にしませんでした。
でも子作りは上手く行ってなかったので、それはひとつの離婚原因にもなったと思います。
そうこうしている内に穏やかな日々は過ぎて行きましたが、ある日、悲しくも私はまた妄想を見るようになりました。
昔のストーカーが記憶によみがえってきたのです。
もう逃げられないと思いました。
私は発狂したりしました。
自分でも自分が分からなくなりました。
結果、入院を余儀なくされ、そこで初めて、夫に実は精神分裂症であったことを伝えました。
結婚詐欺だと怒られると思いました。
でも夫はずっと一緒に居ようと言ってくれました。
嬉しかったし、涙が出ました。
でもその後、私は一人で離婚届を出しました。
彼をこれ以上、私のせいで不幸にさせたくなかったのです。
当然、さすがに勝手に離婚届を出したことを、彼は怒りました。
でも最後は諦めてくれました。
もうこれ以上、誰も苦しめたくなかった。
苦しむのは私一人で十分なのです。
あれから20年、両親は亡くなり、今は一人静かに暮らしています。